この記事は、新人看護師の教育担当として初めてプリセプターを任された看護師、また教育委員など教育の指導をする立場にある方を対象に書いています。
プリセプターは基本的に新人看護師を選べません。
そのため、「どんな子が来るんだろう?」「相性が悪かったら?」「やる気が無かったら?」など様々な不安を抱えながら業務を担うことになります。
そんな不安やストレスの一つが、今回のテーマである「新人看護師が成長しない…どうしよう?」という問題です。
この記事では、「成長しない新人看護師」を受け持っているプリセプターが、
①何故辛いと感じるのか
②このストレスをどのように解消したらよいのか
③成長しない新人をどう対応したらよいのか
それぞれの考え方をまとめました。
新人看護師が成長しないのは自分のせいだと思って辛くなっているプリセプターの皆さん。
大丈夫、あなたのせいでは決してありません。
この記事を読んで、プリセプターの辛いを解消していきましょう。
プリセプターは「新人看護師が成長しない」と何故辛いのか?
プリセプターは、新人看護師が成長しないと何故辛いと感じるのでしょうか。
メンターの方や教育委員など指導する立場の方向けに、その理由を簡単にまとめました。
・自分の教育方法に自信がなくなる
・成長しない新人看護師が嫌いになる
・他の新人看護師と比べてしまう
・先輩看護師・上司と新人看護師との板挟みになる
自分の教育方法に自信がなくなる
教育者の力量が、新人看護師の成長に100%反映するとは限りません。
しかし看護師は責任感が強い人が多いため、新人看護師が成長しない理由を「自分の教育が悪いのでは?」「教え方が間違っているのでは?」と考え、辛くなります。
教えるという行為は、人間を相手にしている以上「この方法でやれば絶対に成長する」という絶対解がありません。
どんなにベテランでも、いわゆる「成長の遅い人」や「理解力に乏しい人」などに当たれば、上手く成長させてあげられないのは当然です。
「この子は成長がゆっくりだから、ゆっくり見守ったほうがいい」と判断出来るのは、ある程度教育を何度も担ったことがある人にしかできないのです。
しかし、プリセプター制度というのは3~4年目のスタッフを対象に任命されることが多く、その新人看護師の個別性を上手く見抜けません。
3~4年目という余裕がない時期に「成長しない 新人看護師」を受け持つと、「自分の教育が悪いから新人看護師は成長しないんだ」と捉えてしまいがちなのは、当然なことだと考えられます。
成長しない新人看護師が嫌いになる
頑張って教育をしているのにも関わらず、相手が自分の頑張りに答えてくれないと、人はだんだん相手のことが嫌いになってきます。
「頑張ろう」と意気込んでいる人ほど、「なんか嫌いになりそう」とバーンアウトしがちです。
そして、新人看護師を嫌いになっている自分のことも、だんだん嫌いになっていきます。
人間上手くいかないことがあると、何もかも嫌になっていくものです。
この負の連鎖は、どこかで必ず誰かが断ち切ってあげないといけません。
他の新人看護師と比べてしまう
人はどうしても、他人と比べてしまいます。
「他の新人看護師はもう夜勤に入れているのに、自分の新人看護師はいつになったら夜勤に入れるのだろう…」
こんな時、自分の指導方法が悪くて新人看護師が成長していないと感じるでしょう。
他の新人看護師という比較対象がいる分、遅れているという部分が明確にわかってしまいます。
「自分の教育の出来=新人看護師の成長」とは限りません。
しかし、そうは言ってもこうして明確に差が出てしまうと辛くなります。
先輩看護師や上司と新人看護師との板挟みになる
新人看護師が成長しないと、だんだん業務にも支障をきたし始めます。

あなたの新人看護師、全然仕事出来ないんだけど、どうするつもり?

あの子、こんなことも出来なかったけど?
新人看護師の教育が、全部プリセプター任せの部署だとこんな苦情が入ることもあるかもしれませんね。
しかし成長待つために、新人看護師には辛抱強く教育していかなくてはなりません。
このように、成長しない新人看護師と、成長をせかす先輩看護師との板挟みになり、プリセプターはどんどん追い込まれていきます。
「成長しない新人看護師」のプリセプターのストレスを解消する方法
プリセプターは様々なことが原因で、成長しない新人看護師を受け持つことによるストレスに晒されています。
それでは、このストレスをどのように解消したらよいのでしょうか?
この章では、成長しない新人看護師を受け持ったプリセプターの考え方と、周囲の人を活用することでストレスを解消する方法を簡単に解説します。
「自分の教育能力=新人看護師の成長」ではない
プリセプターの役割は新人看護師の相談役である
「新人看護師が成長しない問題」はみんなで解決する
ここではストレスの解消法について簡単にまとめておきます。詳しくは別記事をご参照ください。
「自分の教育能力=新人看護師の成長」ではない
成長しない新人看護師を受け持ったプリセプターは、「自分は教育が下手くそなんだろうか?」と落ち込みます。これがプリセプターの辛い原因の一つです。
新人看護師が成長しない理由は様々ありますが、プリセプターの教育レベルが低いからといって、予定スケジュールから遅れるほどの差は生まれないと私は思っています。
もちろんプリセプターは、教育について勉強し(このサイトの記事を読むだけでも十分レベルは上がります)、その新人看護師にあった教育方法を模索していく必要はあります。
「自分の教育能力=新人看護師の成長」と考えるのではなく、「新人看護師が成長しない理由はどこにあるんだろう?」と様々な視点から客観的に捉えてみましょう。
プリセプターは新人看護師の相談役である
プリセプターの一番の役割は、新人看護師の相談役であることです。
これはとても大事な視点なので、教育で迷ったことがあったらこの言葉を思い出してください。
学校を卒業し、社会人として働き始めた新人看護師が、学校とのギャップを埋めて職業人として立派に成長するのをサポートする役割、それがプリセプターです。
「なんとか成長できるようにしなくては!」と焦ってしまうと、ストレスになります。
成長しない新人看護師が相手であっても、あなたの役割は「一緒に1年を乗り切る相棒」ただそれだけ、と考えれば楽に考えられるでしょう。
「新人看護師が成長しない問題」はみんなで解決する
そもそも教育とはプリセプターがたった一人が頑張るものではなく、部署全体、病院全体で取り組むものです。
一人で解決できない問題は、他の人と相談しながら方向性を決めていくのも自然な流れだと思っています。
新人看護師の問題は、部署全体の問題です。
今までの教育方法でうまくいかない人というのは、数年に一人のペースで必ず出てきます。そういう時、教育方針を変えようという決断をプリセプターが下すには荷が重すぎるし、決定権もないでしょう。
その際に動くべきは、上司、先輩、メンター、教育委員などの教育を担う経験者です。
「教育が思ったようにうまくいかない」「自分の教育が悪いのかも」とつまづきそうになったら、周りの意見を聞く機会を設けてもらいましょう。
新人看護師の教育は、プリセプターが一人で頑張るものではありません。
上手く他人の意見を取り入れて、プリセプターの一年を乗り切りましょう。
※なお、この「成長しない新人看護師」を受け持ったプリセプターのストレスを解消する方法は、別記事にて詳しく解説しています。
(リンク:「成長しない新人看護師」のプリセプターのストレスを解消する方法)
「成長しない新人看護師」にはどのように対応すべきか
これまでにこの記事では「成長しない新人看護師」とひとくくりにまとめてきましたが、その「成長しない」理由と言うのは状況により様々です。
新人看護師が成長しないと捉えられてしまう一例として、当サイトでは以下のように列挙いたします。
<新人看護師が成長しない理由の一例>
・新人看護師の元々の資質が低い
・新人看護師が高次機能障害や発達障害など、何らかの問題を抱えている
・職場の教育スケジュールに問題がある
・元々の職場の教育レベルが低い
・職場の教育に対する興味関心が低い
この一例を見てわかる通り、成長しないといわれてしまう原因は「新人看護師自体の問題」と「職場の教育体制の問題」の2つに分かれます。
上記を踏まえて「成長しない新人看護師の対応策」は以下のようになります。
・新人看護師の対象理解を深める
・部署全体で教育方針・指導スケジュールを見直す
・新人看護師・プリセプター双方の個人攻撃をしない
ここでは簡単に、この対応について軽くまとめておきます。詳しくは各項目にあります別記事をご参照ください。
新人看護師の対象理解を深める
新人看護師がどんな人なのか、何が得意で何が不得意なのか、など知ることを、このサイトでは「新人看護師の対象理解を深める」と定義しており、私は教育において一番重要だと思っています。
人は一度「この新人看護師は出来ない子だ」と決めつけてしまうと、その色眼鏡で物事を見がちになります。その結果、良いところ(得意な部分)が見えなくなり、欠点・弱点・苦手・失敗というネガティブな部分しか見えなくなってしまいます。
こうなってしまうと、解決への糸口が見えなくなり、悪循環が完成してしまうのです。
「成長しない新人看護師」と決めつけず、一度新人看護師がどんな人なのか、改めて見つめなおす時間が必要でしょう。
その具体的な方法については、「新人看護師の理解」のカテゴリーにて詳しく解説しておりますので是非ご参照ください。
部署全体で教育方針・指導スケジュールを見直す
指導・教育の年間スケジュールはあくまで「予定」であり、そこから逸脱するのを良しとしない・無理やり押し通そうとするのはタブーです。
また、教育や指導に対する無関心さも状況を悪化させる要因の一つになります。
この記事を読んでいるプリセプターの皆さん、自分ひとりで教育スケジュールを決めたり変更するのは難しいと思います。そんな時は部署の教育担当者や上司を活用してください。
教育は、プリセプターが一人で悩んで解決するものではありません。
部署全体で取り組む必要があります。
現状の教育体制ではついていけない新人看護師が問題に上がっている場合は、プリセプター会や上司、教育委員、メンターなどに相談し、スケジューリングの変更、指導方法の変更、バックアップ体制の変更など、様々な視点から考え直す必要があります。
それは「手間」ではなく、教育について考える「良いきっかけ」です。
この新人看護師を立派な看護師に育て、1年間(場合によっては1年以上かけて)教育を乗り越えれば、部署全体の教育体制の底上げにつながります。無駄なことなどひとつも無いのです。
※もし病院や部署がブラックな体質で、「協力なんて要請出来ないよ!」「部署の先輩や上司には頼れないから一人で頑張るしかない…」と困っているプリセプターの方がいらっしゃったら、お問い合わせか私のTwitter(sakurako_ope)にご連絡ください。可能な限り私が相談に対応します。
新人看護師・プリセプター双方の個人攻撃をしない
この記事を読んでいるプリセプターの方がいたら、新人看護師を攻撃しないで上げてください。
そして、新人看護師が成長しないせいで個人攻撃をされているプリセプターの方がいたら、その部署・病院は、はっきり言って終わってます。
教育体制的に、そこの部署・病院は終わってます。
大事なことなので2度言いました。
何度も言いますが、新人教育は部署全体で取り組むものであって、プリセプターだけが頑張るものではありません。(個人は頑張らなくていい、という意味ではありません)
今後、社会人経験のある新人看護師、外国人看護師、潜在看護師からの復職、様々な経歴を持つ看護師はますます増えてくるでしょう。
そんな時、柔軟な教育体制・指導方針が求められます。
プリセプター1人が頑張るものでもないですし、多様な経歴を持つ新人看護師が今までの教育体制のレールに乗ることが出来ないのは仕方がないことだと思います。
個人を攻撃して解決することは何一つありません。
新人看護師が、一人前の看護師になるまで支えること。
プリセプターが、1人だけで重い責任を抱えることなく、教育に専念できるようバックアップ体制を整えること。
今後の看護師指導には、この視点が必要不可欠です。
まとめ
今回は、成長しない新人看護師を受け持ったプリセプターが何故辛いのか、そしてそのストレスをどのように解決するのか、具体的な対応策について方法をまとめました。
成長しない新人看護師を受け持ったプリセプターが辛い理由は
①自分の教育方法に自信がなくなる
②成長しない新人看護師が嫌いになる
③他の新人看護師と比べてしまう
④先輩看護師・上司と新人看護師との板挟みになる
そして、その辛いストレスを解消する方法は、
①「自分の教育能力=新人看護師の成長」ではない
②プリセプターの役割は新人看護師の相談役である
③「新人看護師が成長しない問題」はみんなで解決する
の3つでした。
「成長しない新人看護師の対応策」は
①新人看護師の対象理解を深める
②部署全体で教育方針・指導スケジュールを見直す
③新人看護師・プリセプター双方の個人攻撃をしない
の3つをご紹介しました。
プリセプターの中には、「新人看護師の問題は全部自分が解決しなければ!」と責任を感じて誰にも相談できず、結果的に潰れてしまう人がいます。
責任感が強い看護師の特徴かな?とも思います。
記事中でも書きましたが、新人看護師教育は一人で頑張るものではありません。
成長できない新人看護師の教育的問題は、部署全体で解決する問題です。
そのことを、忘れないでくださいね。
もしこの記事を読んでいる教育担当者(メンター)の方がいたら、是非困っているプリセプターに手を差し伸べてあげて欲しいと思っています。
プリセプターと新人看護師を孤立させない教育が、日本全国に広がって欲しいです。
このサイトでは、プリセプターが辛くない新人看護師の教育についてまとめています。
もし教育に関してお悩みがあれば、お問い合わせフォームからご連絡ください。
一緒に楽しく、教育について学びましょう^^
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