
Twitterでは看護師さんや放射線技師さん、臨床工学技士さん、お医者さんなど、様々な医療従事者の方と一緒に、日本の医療はどうしたらよくなるのか?についてディスカッションしています。
今回は、平成26年度に厚生労働省が制定した、新人看護師に対する教育制度の基本、新人看護職員研修ガイドライン(改訂版)について説明します。
このガイドラインの制定により、新人看護師は、就職し現場に出た後も研修・指導を受けることによって、病院が一人前の看護師に育てるの対象であると位置づけられました(ただし努力義務であり、義務を怠っても罰則などはありません)。
しかし、皆さんお気づきの通り、このような新人教育を濃くしていったとしても、看護師の離職は後を絶ちません。要は新人看護職員研修を制定しても、現場の看護師は楽にはなっていないのが現状です。
この記事では、新人看護職員研修ガイドラインが何故策定されたのかを解説します。
原文はかなり長々と書かれているため、大事なところだけを掻い摘んで書いていきたいと思います。
新人看護職員研修ガイドライン改訂版とは?
新人看護職員研修ガイドラインとは、平成22年に厚生労働省が策定したものです。
その後、改定の検討がなされ、平成26年に改訂版が発表されました。
ここで大事なのは、「厚生労働省が」新人看護職員の研修制度について策定したということです。省庁が動くということは、そこに税金が投入されているということを示しています。
ガイドラインを作成するために、多額の税金が投入されている
私は先日、日本看護協会主催「新人看護職員教育の研修」に参加してきましたが、そこで講師がこんなことを言っていたんです。
「このガイドラインを作成するためには、500億円の税金が必要だと官僚が言っていました。そのくらいのことなんですよ、ガイドラインを作るっていうのは」
私は気になったので、実際どのくらいのお金が使われているか調べてみたんですが、どうも出てきませんでした。このガイドラインを作るために、有識者会議などを何回も重ねたり、官僚が資料をまとめたり、データを取ったり、そういうところにお金が使われたんでしょうね。
でも500億円って…いったいどんな計算したら出てくるんでしょう。莫大すぎて見当もつきません。
つまり何が言いたいのかというと、看護職員の質の向上と、人材確保の問題は国としても税金を投じるほど重要な案件である、と認識されているということです。
新人看護職員研修ガイドラインは医師臨床研修制度を元に作られている
事の発端は、医師の研修医制度から始まっています。
研修医制度は昭和の時代から検討がなされ、インターン制度を経て、現在の新医師臨床研修制度が平成16年に必修化されました。
「新人看護職員研修ガイドラインは、この新医師臨床研修制度を元に作られている」と研修の際、講師が言っていましたが、厚生労働省のHPなどにはこの文言はどこにも書いていませんでした。
しかし、医師の研修医制度の中身を見てみると、確かに看護師のガイドラインに似ている文言が数多く見受けられるため、これを元に作られたということがわかります。
新人看護職員研修ガイドライン策定までの道のり
どうしてこんなにお金をかけて、厚生労働省がわざわざガイドラインを作ったのでしょうか。検討会の内容を見ていきます。
原文はめちゃくちゃ長いので、私が主観でざっくりまとめてみました。
看護師は医師の指示待ちになっていて、看護判断が出来ていない現状
平成15年の「新たな看護のあり方に関する検討会」の報告書を、めちゃくちゃシンプルに言うと、こうなります。
なぜなら、現場は医師の指示がないと動けないスタッフばかりだから。
それぞれの医療職種が、自分の守備範囲を明確にして、専門性を発揮するのが大事だよね。
そのためには、看護師の継続的な教育をする仕組みが必要なんじゃないかな?
今でも看護師の多くは看護判断をせず、医師の指示待ちになっている現状があると思います。検討会の内容を見るに、「看護判断が出来ない看護師が多いと、今後高齢者も増えるし、医療ニーズに答えられないのはまずいよね?」ということが話し合われたようです。
ただ看護師の仕事って、なかなか言い表すの難しいと思うんですよね。
看護師の専門性を~とか言いますけど、じゃあその専門性って何?
「患者を看ること」、じゃあ「看る」って何?
看護は抽象的な部分が多いし、正解不正解がない世界なので、そこのところ難しい問題だと思います。看護師の裁量でどこまで判断していいのか、それについてはこのガイドラインを制定するだけではなかなか解決しない問題だと、私は思います。
学校も病院も、教育の質や視点がバラバラな現状があった
続いて、平成16年度「新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討会」の内容を、またまたざっくりまとめるとこうなります。
それぞれの病院で新人職員に対する研修制度は作っているが、施設によって質に差が出ている。教育施設においても看護技術の到達度に差が生まれている。
だから卒後1年でどこまで到達すべきなのか、まとめました(リンク参照)
「学校も、病院も、どこまで育てればいいのかと言う視点に一貫性がなかったので、まとめる必要があるよね」といった感じでした。
実際のガイドラインの中にも1年以内に習得すべき看護技術チェックリストがあり、その草案がこの議事録には記載されています。
実際に、厚労省は策定した理由をどう示しているのか?
それでは、実際に厚労省はこの政策についてどのように表記しているのでしょうか?
改定前のガイドラインが出来上がった時の記事が残っているので、そこから拾い上げました。
充実した研修→新人看護職員の円滑な職務参加
が、期待されることから国として次の取り組みを進めています
あくまでも、厚労省としては上記2つを理由に策定したということになっています。
ここに「離職防止」は含まれていません。
「円滑な職務参加」の中には、離職防止が若干含まれているのかもしれませんが、あくまでも新人職員が学校と職場のギャップを感じないように、社会人1年目を過ごせるようにするために策定した、ということです。
まとめ
今回は、新人看護職員研修ガイドラインが作られた理由についてまとめました。
・在宅医療など、患者のニーズが多様化したから
・看護判断の出来ない看護師が増えているという現状があるから
・看護学校・病院、それぞれ教育の達成目標に差があるから
・看護師の専門性を高めるため
みなさんは、この策定理由を見てどう思いましたか?
現場で反映されていると思いましたか?
看護師の質は向上したと思いますか?
多額の税金を投入して作られたこのガイドライン。
この記事を読んで、どうして作られたのかがお判りいただけたかと思います。
このブログでは、このような看護教育から日本医療の闇について、幅広く言及していきます。
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