「さくらこのお悩み相談室」へようこそ。
このカテゴリーでは、サイトやTwitterアカウントに寄せられた質問にお答えしていきます。
似たような境遇にある方やお悩みを持っている方が、少しでもお悩みを解決出来たらよいなと思い、質問提供者の許可を得て作成しております。
もし同じようにお悩みを抱えている方がいらっしゃれば、投書箱かお問い合わせより質問をお送りください。
ケース8 看護学生「看護師になりたくありません」
こちらは、「さくらこのお悩み相談室」の投書箱に頂いたご相談です。
看護学生さんからのお悩み相談
すみません正直に言います、看護師になりたくありません。看護師
経緯は割愛させて頂きますが、この学部に入学し
Twitterとかで実
看護師って何がよくてみんなやってい
(学生/看護4年制大学の3年生/20歳)
さくらこからの回答

看護師になっている人の背景は様々です。私も、看護師になりたいと思ったことは一度もないし、かっこいいと思ったこともありませんが、なんやかんやで10年以上看護師として働いています。
看護学生さん初めまして。この度はご質問ありがとうございます。
今回のご質問の意図は、最後の部分だと捉えたので、それからお答えしますね。
看護師の、何が良くてやってるのか。
これは様々だと思いますが、まずは私が知りうる限りの看護師になった理由をざっと挙げてみます。
まずは、そもそも医療に興味が有った人の理由から。
・看護師という仕事に接点があり興味を持った(親が医療関係、自分が治療された経験、など)
・医者になりたかったけど学力的な問題でなれなかったから看護師になった
・医療行為全般に興味が有った(医療ドラマ等の影響など)
・純粋に人助けがしたく、一番身近な職業が看護師だった
・友達が看護学科を受験すると聞いて、何となく受験した
・他にやりたい職業がなかった
・お金に困らなさそうだと思った
・取引先への営業や、頭を下げたくない人に媚びを売ったりしたくなかった
・純粋に医療は他と比べてかっこいい職業だと思った
・結婚しなくても一人で生きていける経済的な余裕が手に入れられると思った
・子供を養うためにひとりで自立していける職業だと思った(シングルマザー)
次に、親の影響で看護職を選んだ人の理由です。
・看護師という職業を選ぶことを、暗黙の了解的にレールが敷かれていた
・親が医療職だった
・経済的理由で早く安定的な職に就き自立したかった
これは私が実際に見聞きした、様々な現職看護師が「看護師という職業を選んだ理由」をまとめたものです。世の中には、様々な理由から看護師という職業を選んでいるということがお分かりいただけたと思います。
それでは、実際に看護職になって辛いと思いつつも辞めない理由とは、なんでしょうか。
まず私が思うのは、看護師辛いと言いつつも、実際に看護師の職を辞して違う仕事についた人は、本当に一握りの意志の強い人間だと私は思っています。
それは以下の理由からです。
・看護師以外の職業に就くという選択肢が、思いつかない人が多い
・辛い人は転職(病院を歩き渡る)を繰り返し、自分にあった病院を探すという傾向にある(辛い理由は職場環境の問題だと思っている)
・そもそも看護師以外の職業が出来ないと思っている人が圧倒的多数で、候補にも挙がらない人がほとんど
・看護師以外で無資格でもできる職業(OL、販売員など)の初任給与が看護職よりも低く、転職するデメリットを強く感じてしまう
・なんとなく医療以外の職業のイメージがつかず、踏ん切りがつかない
・安定的な職業である医療を捨てきれない
・若いうちは、辛くても体力があるからなんとか耐えられるうちに、中堅・ベテランの域に達し、辞め時を失う
・医療を捨てて、新しい職業へ飛び込む勇気がない
・なんだかんだ文句を言いつつ、医療の職場に身を投じている自分が好きな人もいる
看護学生さんは、看護師が看護師を辞めない理由に使命感をあげていましたが、使命感で辞めないという選択肢を選ぶ人を、私は見たことがありません。
だいたいは、変化を嫌う日本人の特性が強く表れていると思います。
医療を経験した人間は、ある程度自分の知識や技術に自信があり、職場の慣習などに慣れれば、看護師として転職してもある程度仕事をこなすことが出来ると思っています。
しかし全く別の分野(非医療職)で、「使えない人間扱い」を受ける可能性があり、しかも自分が本領を発揮できるかどうかも、のめり込めるかどうかもわからない分野で頑張ろうという気力が、湧かない人がほとんどです。
また医療を志す人は、医療以外の役に立つスキルがない、もしくは持っていてもそれがスキルだと認識できていない人が多く、「自分にあった非医療職とはなんなのか?」が思いつかない人も多いです。
医療職の人が医療職から離れたい場合に選ばれる職業は「病院で働かない医療職(治験コーディネーター、ツアーナース、健診ナースなど)」だったり、「医療職経験が活かされる職業(薬剤メーカー、医療機器メーカー、CAなど)」などが候補に挙がるのがほとんどです。
ある程度医療経験がある人は、自分の経験が役立つ現場を求める傾向があります。
医療の何もかもを捨てて、医療とは全く関係ない起業をしたり、OLになったりする人は、ごくごく少数です。
また、結婚して仕事を辞める人は結構います。
本末転倒ですが、「看護師を辞めたいから早く結婚したい(寿退社願望)」と言う人も割といます。それほど、看護師という職を辞するという決断を、自分ひとりで出来ない人が多いということです(全ての潜在看護師が、このような理由だとは思っていません。あくまで一例です)
看護学生さんは、看護師になりたいと思ったことが一度もないということでしたね。
はい、私も一度も思ったことはありません(笑)
詳しくは書けませんが、私は元々他の医療職になりたいと思っておりました。とある理由からその希望職にはなれない状況だったため、「医療職なら何でもいいや、一番簡単に受かりそうな看護学科にしよう」となんとなく受験し、合格したので通学した、という程度です。
医療職は強い志を持つ者だけがなる職業ではありません。
ビジネスライク的に「最低限の仕事を、最低限にこなし、生きていくための給与を得ればそれでよい」という人間も一定数います。
ですから、使命感がないのに医療職になるのは、全く問題ありません。
はい、そうですね。私もあの頃Twitterがあって、このような現状を知っていれば看護師にはなっていなかったかもしれません。
しかし、私の周りで「職場の悪口」を言っている人はいても、「看護師を辞めたい」と言っている、もしくは「看護師を辞めてこの職業をやりたい」と言う人は、ほとんど見たことがありませんでした。
私は一時期、本気で看護師を辞めて非医療職の転職活動をしていたことがありますが、同僚からも、家族からも、面接官からも「なんでここまできて、看護師を辞めてしまうのか」について深く深く追及されました。そして「何も看護師を辞めることないじゃない」と言う意見が大多数でした。
Twitterは、ネガティブなツイートが良くバズりますし、目につくと思います。
要は「愚痴を吐き出すところ」がTwitterなのです。看護師をやっていてよかったこと、嬉しかったこと、やっていてよかったと思うことはあまりバズりません。それがTwitterと言う場所です。
だからと言って、看護師の職場環境が劣悪だったり、陰湿だったり、ブラック病院と言う存在は、残念ながらまぎれもなく真実です。日本のどこかには、必ず存在します。
ただ、私が働いている割とホワイトな職場があるのも真実です。
ですから、日本で働いている看護師の全てが看護師辛いから辞めたいと思っているわけではないですし、看護師辞めたいけど使命感があるから辞められない、とも思っていません。
Twitterは真実の部分ももちろんありますが、日本の全看護師の総意ではないのです。
私は、ビジネスライク的に仕事をする医療職も、熱い心をもって仕事をする医療職も、今の日本の医療を支えるには必要な人材だと思っています。熱意ある人ばっかりでもいけないし、ビジネスライクな人だけでもいけません。リーダー格となって動き回る人と、それに従う人。そんな人材構成の良いバランスであることが、良い職場だと思います。
しかしそんな様々な人間が混在しているからこそ、意見のぶつかり合いがあり、色んな文句も出ます。混沌としているのが今の日本の医療です。
私がTwitterをやり始めた理由の一つとして、「なんで看護師になってしまったんだろう」「看護師を辞めたいけど辞められない」人に対し、「看護師は職業のうちのひとつでしかないんだから、いつでも辞めてもいいんだよ」「看護師はみんなが思ってるほど素晴らしい職業じゃないんだよ」「私のようになんとなく看護師になってしまった人に、道を外さないで欲しい」という気持ちがありました。
だから看護学生さんのように「看護師になりたくないけど、ならざるを得ない状況にある人」に、私の言葉が届いたという事実に、一つの目標を達成したような気持ちにもなりました。
だからと言って、「看護師になるのは絶対に良くない、おすすめしない」とは言いません。人はそれぞれ職業に対する価値観が違いますし、ビジネスライク的に看護師をしていて、人生が充実している人もいるからです。
「やりたいことを職業にするのはごく一握りの人間だ」とよく言います。
「好きなことは職業にすべきではない」とも言いますよね。
「給与をもらい人間らしい生活するということと、やりたいこと・好きなことをやるということを、混同してはいけない」
看護師として10年以上働いたこの年齢になった今、このことを強く感じています。
給与をもらって、そのお金で好きなことをする人生もありです。
仕事に自分の生きがいを見つけて没頭するのもありです。
仕事を辞して家庭に入り、家庭の中での役割を全うするのもありです。
「全ての人間が、職業にやりがいを求めているか」と言うと「そうではない」と言う事実にたどり着くのに私は時間がかかりました。
「看護師なんて、ただお金をもらう為の仕事」と言葉で言いつつも、「この世のどこかに、もっと楽しくて、自分にあっていて、やりがいがある仕事があるんじゃないか?」と思い、なんとなく消化不良で仕事をしてきました。そして、辞められるタイミングを見計らっていました。
しかし、仕事とは、職業とは、そういうものではありません。
ある程度妥協しつつも職業に就き、その中で自分が輝けるかどうかは、自分次第なのです。
それがたとえ、自分が全く予期しなかった職業だったとしても、同じことが言えます。
医療職は学校を受験する際に職業がある程度決まっていますが、他の学部なんて「どんな会社に」「どんな職種で」「どんな給与で」勤めるかどうかなんて、全く未知数です。人によっては就職できない人すらいます。
何が言いたいかと言うと、看護師にならない道も、なる道も、私はどっちでもいいと思います。
ただどちらの選択をしたにせよ、決断した責任は自分にあります。
今ここで「やっぱり看護師になるのは辞めよう」と決断し、結局自分がやりたい職業が見つからなかったり、定職が見つからなかったとしても、それは自分の責任です。
「他の職業は思いつかないから、とりあえず見つかるまでは看護師になろう」と思って就職し、年月が経ち、看護師が辞めがたくなって「私の人生、こんなはずじゃなかったのに」と思っても、それは自分の責任です。
今はSNSが発達し、現職医療者の辛い現状を誰でも知ることが出来るようになりました。
(私が高校生・大学生の時は、SNSと言えばmixiくらいしかなく、TwitterもFacebookもありませんでした)
様々な情報を得られる状況になったからこそ、現代は情報過多になっています。
その情報は、真実も嘘もごちゃまぜな状況です。
看護学生さんのように、さまざまな情報を見て迷う人も多い事でしょう。
しかし、最終的に決断を下すのは自分です。
この世の中で唯一、自分の人生に責任を負うことが出来るのは、自分ただ一人です。
もしかしたら親の意向などあるかもしれませんが、その親の意向に従うのか、振り払うのかも、厳しいようですが自分の責任です。
看護師になるかならないか。
そして仕事とは、職業とは何なのか。
よくよく自分で考えて、決断してください。
どちらの決断をしたにせよ、看護学生さんの人生が良きものとなるよう、私は願っています。

最後に、さくらこ から 看護学生さんへ
この度は、質問箱に投書をありがとうございました。
少し厳しい話もしたかもしれませんが、仕事とは何なのか、働くとはどういう意味なのか。言い換えれば人生とは何なのか、について考えながら書きました。
今は「看護師になるか、ならないか」の二択しか頭にないと思いますが、話を突き詰めると、結局はそういう話になってくると思います。
実習、辛いと思いますが頑張ってください。
さくらこ
このサイトでは、指導者が辛くならないための看護師の育成についてまとめています。
また、この記事のように教育や育成に関する質問を、無記名・メアド不要で受け付ける「さくらこのお悩み相談室」を開設しました。医療現場での指導場面での悩み、指導される側の「これって変じゃない?」「もう辛くてやめたい」というお悩みにも対応します。お気軽にご利用ください!
コメント