「さくらこのお悩み相談室」を開設

プリセプター「プリセプターをしていると自分の嫌な面がみえてきて虚しくなります」

さくらこのお悩み相談室(Q&A)

「さくらこのお悩み相談室」へようこそ。

このカテゴリーでは、サイトやTwitterアカウントに寄せられた質問にお答えしていきます。

似たような境遇にある方やお悩みを持っている方が、少しでもお悩みを解決出来たらよいなと思い、質問提供者の許可を得て作成しております。

もし同じようにお悩みを抱えている方がいらっしゃれば、投書箱お問い合わせより質問をお送りください。

 

ケース7 「プリセプターをしていると自分の嫌な面がみえてきて虚しくなります」

こちらは、「さくらこのお悩み相談室」の投書箱に頂いたご相談です。

きゅーさんからのお悩み相談

オペ室勤務4年目です。
プリセプターは去年初めてやって、今年もまた新人のプリセプターを任されました。

先日、手術の流れを勉強した上で、私の器械だしを見せるという機会がありました。ただ緊急で入ったオペであったこと、途中からイレギュラーが続いたこと、教えながらの器械だしであったこと、といつもとは違う状況下であった為、私も緊張してしまい、ミスを連発してしまいました。

その中でドクターに「何でこうしてくれないの?」と言われ、「面倒だから」「私も教えながらで、いっぱいいいっぱいなんです」と言ってしまい、後で「後輩の前でそういうこと言うな、後輩のせいにするな」と怒られてしまいました。
いつもなら「すみません、すぐ変えます」と言える場面であり、ドクターの指摘もごもっともで、そもそも私はそんな風に思って器械だしをしていたのかと、自分に愕然としました。

プリセプターをしていると、自分の嫌な面が見えて、虚しくなります。
特に今年の子は覚えるのが苦手で、理由付けや覚え方のコツなど色々試してみても、すっぽり抜けてしまい、最近はイライラしている自分がいます。

なかなか理想の看護師、プリセプターになれないです。

(新人教育者(プリセプター)/看護師4年目/26歳)

さくらこからの回答

さくらこ先輩
さくらこ

プリセプターを経験すると、自分の癖や嫌な部分が見えてきますよね。逆を言えば、今まで自覚しなかった自分の特徴が見えてくるので、自分の成長のきっかけにもなります。最初の頃は、無自覚な自分の特徴を知ることで愕然としますが、それが活用できるようになると、教育者として一歩成長できるようになります。

 

きゅーさん、はじめまして。質問ありがとうございます。

プリセプター、特に手術室のプリセプターは技術的なことを教えることが多く、自分の感覚的に行っていることを言語化して、相手に伝えるという作業はなかなか難しいと私も感じています。

今回は、手術中の器械出しでミスを連発し、Drにも怒られたという場面でしたね。

緊急で入ったオペであったこと、途中からイレギュラーが続いたこと、教えながらの器械だしであったこと、といつもとは違う状況下であった為、私も緊張してしまい、ミスを連発してしまいました。

他人にじっくりと見られながら、しかも緊急手術でいつも通りこなすことが出来るのは、もはやベテランの域です。

私も間違うことはあります。こうすればよかったなと思うことや、この手技を新人看護師に見せたらまずかったな、と反省することもしばしば。

この話から見えるのは、きゅーさんは「通常の心理状況なら出来る」ということと、「特殊な環境下では実力を発揮できないこともある」という特徴です。まあ、普通の人ならこの特徴は当たり前だと思います。

「なんで、私は上手くできなかったんだろう?今度は上手くやろう(どうすれば良いのかは、わからないけど)」と思うよりも、「私はこういう状況では慌てやすい」という自分の特徴を、心に刻む方が次回につながりやすいです。

同じ状況(新人に自分の器械出しを見学させる)は、今後も度々あるかと思いますが、「またあの時のようになったらどうしよう」と不安になるのではなく、「私はこういう状況が苦手なことを知っている。慌てるかもしれない。慌てても出来るように、器械がそろっているか順を追って確認しよう」などと、自分の心理状況を客観的に評価すると、自然と心が落ち着きます。

 

私は手術室看護師なので、器械出し看護のコツをひとつここで教えましょう。

器械出し看護の肝は、器械の事前準備だと私は思っています。

器械があらかじめ使いやすいように準備されていれば、その場で慌てても、準備された器械が「次はこれを使うよ」と教えてくれます。

これは新人看護師に指導する時も使えるテクニックです。

人は通常ではない精神状態に置かれると、普段なら出来ること、普段なら思い出せること、普段なら行動できることが出来なくなります。

それを予防するのが、事前準備です。

Aの器械の横にBが置いてあれば、例えAの次にBを使うということをその瞬間に忘れていたとしても、器械が「Aの次はBを使うんだよ、一緒に準備してね」と教えてくれます。

器械準備・器械展開とは、未来の自分への先行投資だと思ってください。

 

しかし緊急手術などの場合は、ゆっくり時間をかけて器械準備に時間をかけることが出来ないこともあるかもしれません。

そんな時の為に、普段から器械をどのように準備すれば自分は最大のパフォーマンスを発揮できるか、を常にトレーニングすると良いでしょう。

私の病院は緊急開胸術が多い病院なので、定期手術の時でも「今まさに緊急手術が入って、今すぐ胸を開けないと死ぬ、という患者が入室してくるとしたら、何から準備するのが最善か」というテーマをもって、新人の頃は器械準備をしていました。

時間がある時は、器械準備にゆっくり時間をかけることができますが、今回のお悩みのテーマのように緊急手術で時間に余裕がなく、そんな中でも自分の持てる力を最大限に発揮するには、普段からのイメージトレーニングが必要です。

 

新人看護師の頃は、おそらく今と同じような慌てている心理状況の中で、必死に手術の流れに食いついて仕事をしていたんだと思います。先生に怒られつつも、なんとか仕事をしてこれたのは、「自分の責任は自分が負えばいい状況だったから」です。

その中でドクターに「何でこうしてくれないの?」と言われ、「面倒だから」「私も教えながらで、いっぱいいいっぱいなんです」と言ってしまい、後で「後輩の前でそういうこと言うな、後輩のせいにするな」と怒られてしまいました。

後輩がいながら、または後輩のフォローに入るとなると、状況はまた変わります。「教えながら器械出しをする」というのは、実はかなり高等な技術です。

今回のお悩みは「後輩が見学に入っている状況」でしたね。

まず、緊急手術で自分がいっぱいいっぱいな状況で、新人看護師に教えながら器械出しをする、のは安全性においてよい状況とは言えません。

この状況下(後輩が見学している)において、私なら「器械出し中に後輩に教える」という行為はいったん諦めます。安全じゃないからです。

後輩には「今余裕ないから、あとで教えるね」と言って、術野に集中することを優先します。後輩も、そう言われたからといって見捨てられたとは思わないでしょう。

見せる、教える、やらせる、という医療における教育行為は、安全性が担保された状況でないなら、行う必要は私はないと思います。むしろ行ってはいけません。

いつもなら「すみません、すぐ変えます」と言える場面であり、ドクターの指摘もごもっともで、そもそも私はそんな風に思って器械だしをしていたのかと、自分に愕然としました。

きゅーさんは、「面倒だから、いっぱいいっぱいなんです、と表現した自分に愕然とした」と表現されていますが、実際はそうじゃないと思います。

もちろん、いっぱいいっぱいだったのは、事実だと思います。

「教える」という行為と、「緊張している中、器械出しをする」という二つを両立するのが難しかった、というのが実際の所だったのではないでしょうか。

「後輩が見てるから上手くできない」ことを、「後輩がいるのが悪い」と思っているわけではなく、「教えながら器械出しをする、2つを両立するのが難しかった」ただそれだけだと思います。

焦っていると、思いもよらないことを口走ったりするのは良くあることです。

きゅーさんが、イレギュラーが重なった臨時手術の器械出しをすることも、同時に後輩に指導することも、どちらもこなそうと頑張った結果から出た言葉だと思います。

きゅーさんはまだ看護師4年目で、キャリアとしてはまだ浅い部類に入ると思います。

焦って当然です。
上手くいかなくて当然です。

両立できないと思ったら、手術を優先してください。
そして後輩に指導していることは、一旦忘れてください。

それが手術室看護師としてのあるべき姿であると、後輩はその姿を見て学ぶでしょう。

プリセプターをしていると、自分の嫌な面が見えて、虚しくなります。
特に今年の子は覚えるのが苦手で、理由付けや覚え方のコツなど色々試してみても、すっぽり抜けてしまい、最近はイライラしている自分がいます。

プリセプターをしていると、自分の特徴が見えてきますよね。

「これを教えるのが苦手だな」とか、「思った以上に伝わらないな」とか、「なかなか育たない新人にイライラしてしまうな」とか。

教育に携わると、自分の弱点が見えてくるのはごく自然なことだと思います。
なぜなら、今まで接したことのない種類の人間と、密接にかかわる数少ない機会だからです。

私たちは就職するまでの間、家族を除き、ある程度付き合う人間を選ぶことが出来ました。

一緒に遊ぶ友達、一緒に学ぶ学友、お付き合いする恋人。
気が合わなければ、距離を少し置いたり、お別れしたりすることができます。

しかし、職場の人間、特にプリセプター・プリセプティの関係性は、苦手でも密接に関係するしかありません。

これがストレスになる人はとても多いです。

そこに「自分との相性が悪い人間」となると、さらにイライラは募ります。

「なんで説明したのにわかってくれないんだろう?」

「私はこの方法で出来るのに、なんでこの子は出来ないんだろう?」

「わかったって言ってたのに、全然出来ないじゃん」

こういう思いが積み重なり、プリセプターのストレスは大きく膨れ上がっていきます。

この対応策については、以下の記事にまとめてあります。
もし読んでなければ、ご一読ください。

 

なかなか理想の看護師、プリセプターになれないです。

上手く教えるなんて、何年経ってもなかなか「出来た」とは言いづらいです。

新人看護師の個性も様々です。
それに対応するのが教育者の醍醐味でもありますが、その道は一筋縄ではいきません。

教育は、試行錯誤の繰り返しです。
10年以上教育に携わっている私でも、常に迷いながら指導しています。
なぜなら、万人に当てはまる教育の正解は、どこにもないからです。

教育に迷い、理想のプリセプター像を追うきゅーさんの感性が、私は素晴らしいと思いました。

人によっては全てを新人看護師のせいにして、「私の指導は正しい。新人が育たないのは、新人が悪いからだ」と思いこむ人もいます。

教育は、必ず痛みを伴います。
自分の知識のなさ、指導力のなさ、余裕のなさ…。

でもそんな自分の出来ない部分が見えてくるからこそ、新人看護師の「出来ない」部分に寄り添えるとも言えます。

なんでもできるようになってしまったベテラン層は、新人看護師の「出来ない」部分に寄り添えきれないんです。出来なかった頃の感覚を、徐々に思い出せなくなってしまうんですよね。

指導によって成長するのは、新人看護師だけではありません。
むしろ、プリセプターの方が成長すると言っても過言ではないと思っています。

今、まさに教育の痛みをきゅーさんは感じていると思いますが、新人看護師と一緒に乗り越えていってほしいと思いますし、今このことに気づけたきゅーさんなら、乗り越えられると私は信じています。

さくらこ先輩
さくらこ

最後に、さくらこ から きゅー さんへ

この度は、質問箱に投書をありがとうございました。

手術室看護における器械出しは、時間的制約(手術の流れを止めない)がある中で指導しなければならず、技術を教えるという面で非常に難しいと感じています。

きゅーさんの悩みは、全国の手術室看護師が一度は経験するような内容だと思います。

私も器械出し看護、手術室の教育について考え直す良いきっかけにもなりました。

今悩んでいることを、今すぐ肯定的に捉えることは難しいかもしれませんが、新人さんと向き合いながら、自分とも徐々に向き合っていけたらいいなと思っています。

さくらこ


このサイトでは、指導者が辛くならないための看護師の育成についてまとめています。

また、この記事のように教育や育成に関する質問を、無記名・メアド不要で受け付ける「さくらこのお悩み相談室」を開設しました。医療現場での指導場面での悩み、指導される側の「これって変じゃない?」「もう辛くてやめたい」というお悩みにも対応します。お気軽にご利用ください!

さくらこのお悩み相談室の概要はコチラ

コメント

  1. きゅー より:

    さくらこさん
    丁寧なアドバイス、ありがとうございます。
    苦しかった何かがほどけました。
    ショックでマイナス思考になっていましたが、せっかくのチャンスなので 、これからはプリセプティとゆっくり一緒に成長していこうと思います。

タイトルとURLをコピーしました