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既卒看護師「手術室の器械出しの勉強の仕方を教えてください」

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ケース5 既卒看護師「手術室の器械出しの勉強の仕方を教えてください」

こちらは、「さくらこのお悩み相談室」の投書箱に頂いたご相談です。

AOIさんからのお悩み相談

はじめまして。
他部署から異動になった4年目看護師です。器械出しの勉強の仕方についてご指導頂きたく投稿させて頂きました。

当院では手順書を読み込む→指導付きで器械出し→指導者と流れの振り返りというシステムなのですが、自身で器械出しの理解を深めるにはどのような方法があるでしょうか?
まだ不慣れで術野の理解が不十分な為、器械を予測して出すことが不十分になり、後手に回って焦ってミスをしてしまいます。

自身としては録画を見ながらの復習や術式に沿った書籍での学習をしたいのですが、そこまでしているスタッフもおらず、部署にそのような書籍もありません。
一旦、解剖学書を用いて勉強してみようとは思っていますが…

覚えも悪いので、出来ることは全てしたいので、器械出し全般におけるお勧めの学習方法を教えて頂きたいです。

(既卒看護師/看護師4年、異動してまもない/25歳)

さくらこからの回答

さくらこ先輩
さくらこ

手術に入る器械出し看護師は、術中にメモを見ることが出来ないため、丸暗記しなければならない項目が沢山あり、かつ手術と言う緊張下で実力を発揮できないスタッフが多いです。自己学習の方法も、自分の学習タイプによって様々なので、参考にされてください。

AOIさん、はじめまして。質問ありがとうございます。

他部署から異動になった既卒看護師は、手術室であまりにも自分の経験を活かせず、辛い思いをする人が多くいます。

そんな中、自分なりに学習を深めたいという姿勢は素晴らしいですね。しかし、そのような学習方法を行っている人がいず、困っているということでしょうか。

私個人の意見としては、手術室の器械出し看護の書籍学習は必要ないと思っています。
理由は、病院によって器械の呼び名が違ったり、医師独自のやり方があったりと、一概に「これは絶対にこう」と言い切れない部分が多いからです。

 

手術室看護における器械出し看護師の役割について、まずは基本的なところから考えてみましょう。

新人看護師(または手術室未経験既卒看護師を含む)が、器械出し看護師として経験を踏み成長していく最初の段階を、私は以下のようにまとめてみました。

<初めて器械出しに入る看護師の最初のステップ>

・器械の名前がわかる、器械の基本的な用途がわかる

・呼称された器械を、Drに手渡すことが出来る

・清潔・不潔の概念がわかる、その対応がわかる、支援を受けて対応できる

・器械・医材のカウントが出来る、支援を受けてカウントが間に合う

・手術の基本的な流れがわかる、手術後に振りかえることが出来る

・手術の雰囲気に慣れる、Drに慣れる

・自分の不得意な部分や得意な部分を、後から振り返って次に活かす

ステップ1で大事なのは、「わかる」と「対応できる」「出来る」は違うということです。

手術という異質な空間に、新しく入ったスタッフは緊張します。少し怒られたりしたものなら、頭が真っ白になって、次の行動が思い出せなくなったりするのは、ごく自然なことです。

まずは、慣れるということが大事です。「わかっていたけど出来なかった」原因は、大部分が緊張のせいです。そこは、数をこなして慣れていくしかありません。

最初の頃は同じような症例に繰り返し入る機会が多いと思いますので(施設によります)、医師やその手術の雰囲気にも慣れていくはずです。そうなった時に、自分の中で乗り越えられない壁がもしあれば、そこはプリセプターと一緒に対応策を考えていく必要があります。

人によって得意不得意があります。
出来なかった部分、不得意な部分を「次は気をつけようね」「次はちゃんと覚えていようね」という精神論で片付けてはいけません。そこは常に実行可能な具体策まで掘り下げる必要があります。

器械出しはメモを見て、自分のタイミングで行うことが不可能なので、メモを見なくても思い出すことができ、かつ医師のタイミングに合わせて行動する必要があります。

「メモを見なくても思い出す」のをどのように対応策をたてるか、と言うことに関してですが、これは本当に人それぞれです。

人にはそれぞれ学びやすい学習タイプがあり、それをこのサイトでは優位感覚として紹介しています。まずはAOIさんがどのタイプなのかを調べてみてください。そこに学習しやすい方法が載っています。

私の職場にも、聴覚型、視覚型、身体感覚型、それぞれ異なったタイプのスタッフがいますが、勉強の仕方も人それぞれです。

聴覚型はメモを貼ったりしない代わりに、独り言が多いです。独り言で思い出しています。

視覚型は解剖から器械の展開図まで、まるで教科書のようなノートを作り、展開時にはそれを壁に貼っておさらいしてから手術に臨んでいます。

身体感覚型は、自分だけにしかわからないメモを作り、それを頼りに暗記します。

AOIさんが、どのタイプかわかりませんが、自分が「何を頼りに記憶をしているか」を知ることによって、記憶の定着率が格段に上がると思います。おそらくこの学習タイプを知らずとも、自然に自分が覚えやすい方法で今まで勉強してきたはずです。しかし、他の人が覚えられた方法を知ると、自分も真似したくなるのが人間です。

他の人(視覚型)がきれいなノートを作っていると、自分(私は身体感覚型です)も真似したくなりますが、到底視覚型が作るような綺麗なノートは作れません。そして作っている間に飽きてしまいます。ノートを作ることが目的になってしまい、結局記憶の定着に結びつかないからです。

ですから、自分にあった適切な方法で学習することをお勧めします。プリセプターが「こうしたらいいよ」という方法が、必ずしもAOIさんに合致するとは限りません。もしプリセプターに「なんで私が教えた方法でやってこないの?」など言われたら、「私はその方法では記憶しにくいので、自分のやりやすい方法でやりたいんですが、ダメですか?」と言ってください。部署の人が全員同じ方法で学習しているはずがないので、無理に学習方法を押し付けられることはないはずです。

 

次に、手術の流れを記憶する時、私が実際に指導しているとっておきのコツを教えます。

それは、手術を一連の流れではなくパートに分けて考える、ということです。

「手術の流れが覚えられない」と言う人の多くは、手術の一連の流れをすべてくっつけて覚えようとします。

例えば、ラパコレ(腹腔鏡下胆嚢摘出術)だったら、

①器械展開
②消毒
③ドレーピング
④コードのセッティング
⑤皮膚切開
⑥ポート挿入
⑦鉗子操作
⑧クリッピング
⑨胆嚢摘出
⑩再気腹
⑪止血確認
⑫ドレーン挿入
⑬カウント
⑭閉腹
⑮ドレッシング

といった順番になるかと思います。

覚えられない人は、これを丁寧に①から順番に思い出そうとします。
さすがにラパコレの順番が覚えられない人はいないと思いますが、「よし、今日はポートを上手く渡せたぞ!・・・あっ!そうだ鉗子は何から渡すんだっけ!?」というように、場面から場面に切り替わる時まごつく人は結構います。

そういう時、私は場面をパートごとに分けて、それが微妙に重なる状態であることを教えます。

基本的に器械出し看護とは、行為を連続して行うのでは遅く、前段階の時点で次の物品を予測して(または覚えて)準備する必要があります。

これが中堅~ベテラン層になると、医師の会話や術野の状態などから判断して、通常では使わないような器械の準備を外回り看護師に依頼したりしますが、まだ経験が浅い方はそういった知識がないので難しいと思います。

まずは、基本的な手術の一連の流れをパートで分けて覚えます。

「このパートが終わったら、次のパートではこれを使うから、今のうちに準備しておこう」

この思考過程が出来るようになると、後手後手に回って手術に追い付かなくなる、ということを予防することができます。

人は一個一個の物を単体で覚えるのは苦手ですが、連想できるイメージの大きさにすると、ある程度覚えられる性質があります。例えば、6つの数字「435415」を覚えなさいと言われると、なかなか覚えられるのは難しいですが、「435」「415」を覚えなさいと言われると、記憶できるような気がしますよね?もしくは「43」「54」「15」でもいいかもしれません。

無秩序に並んでいるものを思い出すのは難しいですが、ひとつずつをまとめたり、くっつけたり、繋げたりすることで人は初めて覚えることができます。

記憶に関しては、このように人間の記憶の性質を使って効率よく覚えていくと良いかなと思います。もちろん、優位感覚の差はありますので、書いて覚える、言って覚える、その場面を思い出して思い出すなど、自分流にアレンジしてください。

まだ不慣れで術野の理解が不十分な為、器械を予測して出すことが不十分になり、後手に回って焦ってミスをしてしまいます。

術野の理解は、最初は難しいのである程度は仕方がないと思います。特にイレギュラーな場面での対応は、現時点では出来なくて当たり前だと思ってもらって構わないです。

術野の理解で準備が遅れる場面、例えば消化器外科等で腸管切断のタイミングがわからないとか、閉腹になるタイミングがわからない、などは最初のうちは正解がわからなくて当然なので、フォローの人に聞くのが良いと思います。

「そろそろ切断ですか?」「そろそろカウントしたほうがいいですか?」と聞いて、「まだ早いよ」「そうだね、そろそろ準備しておこうか」とフィードバックを受けることで、タイミングがつかめるようになってきます。

術野判断はそれこそ人それぞれ臓器の状態が異なるので、一概に「こうなったらこう」と言い切れないのが難しいところです。

手術の流れや吻合方法については、インターネットで検索すればある程度良質な手順書が出てくることが多いですし、最近では動画で配信されていることもあるみたいです。

看護師向けの周術期の本は手術内容について大まかにしか書かれておらず、実際買っても役に立たないことがほとんどでした。それよりも、Google検索をして医師向けの論文などを読んだ方が、どこの動脈を処理してからどこを剥離するなど、細かく載っていてとても勉強になります(所属の病院が医中誌などの論文閲覧サイトと契約していれば、病院PC端末から検索をかけると論文が見放題なのでとても便利です)

 

今は手術に入ると緊張してしまい、実力が発揮できない時期だと思います。
手術の緊張感に慣れるには、数をこなすのが一番です。

手術に慣れ、自分の実力が発揮できるようになって初めて、「より良い器械出し看護とは?」が考えられるようになっていくでしょう。

最低限の器械出しが出来るようになって、そこで歩みを止めてしまうと「事故は起こさないけど、いつまでたっても医師に信頼されない看護師」になっていまいます。独り立ちした後も気を抜かず、「今日の器械出しでよかったところは?改善すべきところは?」を自問自答してください、私は10年以上手術室にいますが、毎回自問自答しています。日々勉強です。

さくらこ先輩
さくらこ

最後に さくらこ から、AOIさんへ

AOIさん、この度は相談箱へ投書をありがとうございました。

手術室に配属され、もうすぐで2か月ですね。手術の雰囲気には慣れましたか?

病棟で培った経験が活かせず、辛い気持ちになることもあるかもしれませんが、病棟看護師としての経験が、手術室で活かせる日が必ず来ます。

今は新しいことをたくさん詰め込まれて大変だと思いますが、徐々に覚えていって素敵なオペナースになれるよう期待しています。

この度はありがとうございました。また悩むことがあればご連絡ください。

さくらこ


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