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教育担当者「新人看護師が辞めない職場環境を作るにはどうしたらいいですか?」

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ケース11 教育担当者「新人看護師が辞めない職場環境を作るにはどうしたらいいですか?」

こちらは、お悩み相談室の投書箱に頂いたお悩み相談です。

ぱんだくまこさんからのお悩み相談

総合病院急性期病棟で、今年新卒の教育担当を初めてしています。過去にはプリセプター、2年目以上の教育担当などは経験しています。

現部署に私自身異動して2年になりますが、ここ、4年ほどは新卒がなかなか続かず、辞めたり、中途で、他部署に異動となる状況が続いています。
教育に携わるスタッフ以外の指導が威圧的だったり、新人が安心感を持てなかったりするため、自信をなくし、精神的に不安定になる、パターンです。

新人が悪い、に終始してしまい、スタッフが自分たちを振り返ることなくここまできてしまった。

6月に今年の新卒さんも他部署に異動となりました。

残りの新卒さんも、安心して仕事をして欲しい。

職場環境を変えるには、徒頭を悩ませています。

お知恵をいただけるとありがたいです。

ちなみに、30ー40代のスタッフが半数を占め、実習指導や、教育、プリセプター経験者です。

(教育担当者/看護師25年くらい/40代)

さくらこからの回答

さくらこ先輩
さくらこ

ぱんだくまこ さん、初めまして。教育担当者と実際に教育を担う人との意識の乖離を埋めるのは大変難しく、そして地道な努力が必要になります。しかし、この現状をどうにか変えたいと思ってくれる仲間がいて、私はとても嬉しく思います。

ぱんだくまこさん、この度はお問い合わせありがとうございます。

このメールをいただき、真っ先に以前メールでやり取りをした方と同じ相談内容でアドバイスしたことを思い出し、早速記事にしました。

こちらの記事を読めば、ある程度、部署の教育改革をする方向性がわかるのではないかと思います。

教育に携わるスタッフ以外の指導が威圧的だったり、新人が安心感を持てなかったりするため、自信をなくし、精神的に不安定になる、パターンです。

新人が悪い、に終始してしまい、スタッフが自分たちを振り返ることなくここまできてしまった。

同じ部署に居続けると、井の中の蛙になってしまいます。

「今までこのやり方で育ってきたんだから、これでいいんだ」
「最近の新人はメンタル弱すぎ、すぐ異動しすぎ」
「私の頃はもっとひどかった」
「看護師は皆私と同じ辛さを体験するべき」

「変えるべきは私ではなく、新人の方」

こういう、とても古風な言い訳をして、自分を変えない人は結構います。
そして、こういう考えの人が大きな顔してパワハラをするのが看護という業界です。

他の部署から移動してきた ぱんだくまこ さんだからこそ、新人のほとんどが部署異動になるこの現状が異常であると気づけている、これは大きな強みだと思います。今の腐った部署の慣習を変えるチャンスです。

では具体的に、どのようにしたら部署の職場環境を変えることが出来るのか?

参考記事にも書いてありますが、今一度抜粋します。

<部署の教育環境を変える6ステップ>

①現状と課題を正しくとらえる

②スタッフ全体に教育への興味を持ってもらう

③正しい教育とは何かを浸透させる

④何を改善すべきなのかを一緒に考える

⑤部署全体で教育の改革に取り組む

⑥教育の「質」を評価する

非常に遠回りのように感じるかもしれませんが、職場環境を変える、つまり構成されるスタッフの意識改革をするには、時間と労力をかけるのが必要不可欠です。

人の性格は、そうやすやすと変わるものではありません。

「私は正しい」と思っている人に対し、「私は間違っていたかもしれない」と非を認めさせるのは、少しずつ自分で自分を理解し、順番に受容していくステップを踏んでいかないと難しいものです。

それが、ボトムアップの施策だと尚更です。

ぱんだくまこさんは、看護師経験年数が25年以上と大ベテランですが、部署に異動してからはまだ丸一年ほどであり、強く言える立場にはないのではないかと思います。

そこで「ここの部署の教育は間違っている、だから新人も辞めてしまうんだ」と言ったところで、経験された通り「新人が悪い」で終わってしまうでしょう。

まずは、客観的に今の現状を正確に捉えます。
出来ているところ、出来ていないところ、出来るとなお良いところ、教育について全体的に知識が浅いところ、新人が安心して成長できない部分、など、部署の特徴を捉えます。場合によっては、アンケートを取るなどして、無記名方式で意見を募るのも良いと思います。実際に、教育に対して無関心に見える人でも、実は悩んだり困っていたり、環境を変えたいと思っていたりするものです。

人は、外見だけでは真の意図はつかみきれないと私は思っています。
本当は優しくしたいと思っていても、他に合わせないといけないと思って厳しく接したり、自分の仕事の煩雑さのせいで適当にあしらってしまったり。

傍若無人のように見える人でも、実は内面ではその性格にとても悩んでいて、変えたいと思っていたり、人間の心と言うのは本当に様々で複雑です。

ですので、ぱっと見「この人はどうせ言っても変わってくれないだろうな」と思うような人達の中にも、新人が辞めていく現状に心を痛めている人が少数でも隠れている可能性があります。

職場風土を変えるステップに沿って、時間はかかるかもしれませんが、どうか新人が伸び伸びと成長できる職場づくりをどうか目指してください。私は切に願っています。

 

 

しかし、このゆっくり職場環境を変えていく方式だと、今まさに残っている新人さん達には還元できないです。ですので取り急ぎ、残っている新人さんたちに出来ることを書き記します。

教育に携わるスタッフ以外の指導が威圧的だったり、新人が安心感を持てなかったりするため、自信をなくし、精神的に不安定になる、パターンです。

指導者が行った教育が良くなかったという場面のフィードバックは、事実が発覚してからすぐに行わないと効果がありません。ぱんだくまこさんが、直接指導者に対してフィードバック出来る立場にあるなら、見つけ次第即座にフィードバックをする必要があります。

フィードバックとは、看護業界でも割とメジャーに使われていると思いますが、正しく使えている人はあまりいません。

中原淳先生の著書である「フィードバック入門」に書いてあるフィードバックの定義とは、以下の通りです。

フィードバックとは端的に言ってしまえば、「耳の痛いことを部下にしっかりと伝え、彼らの成長を立て直すこと」です。

より具体的には、フィードバックは、次の二つの働きかけを通して、問題を抱えた部下や、能力・成果の上がらない部下の成長を促進することを目指しています。

1.【情報通知】
たとえ耳の痛い事であっても、部下のパフォーマンス等に対して情報や結果をちゃんと通知すること(現状を把握し、向き合うことの支援)

2.【立て直し】
部下が自己のパフォーマンス等を認識し、自らの業務や行動を振り返り、今後の行動計画をたてる支援を行うこと(振り返りと、アクションプランづくりの支援)

フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術 /中原淳 著」より抜粋


この定義からもわかる通り、相手に対してフィードバックするというのは、「そういう言い方は良くないよ」とか「そんなこと言ったら新人さんがかわいそうだよね?」と良心に訴えかけたり、そういう意味ではないということがわかると思います。

では、どのように指導者に対してフィードバックするのが良いのでしょうか。

簡単な例を挙げてみます。

指導者が新人看護師に対して、大きな声で叱責しているのを見かけました。

「なんでこんなに遅くになって報告してきたの?もう16時だよ?今からやっても時間内に終わらないじゃない。何度言ったらわかるの?」

新人看護師は、結局どうしたら良いかわからず、俯きながら去っていきました。

新人看護師を不憫に思いあとを追って話しかけると、実は14時過ぎに報告をしようとしたのだけれど、緊急入院と緊急手術が同時に重なってしまい、「後にして」と言われ、そのまま声をかけずらくなってしまった、ということでした。

あなたなら、新人看護師と指導者にどう声をかけますか?

まず大事なのは、新人看護師に対し、指導者が出来ていないアフターフォローをしてあげることです。疑問がいつまで解決されないと、新人看護師は「出来た」という感覚を一切味わうことなく、時間がどんどん過ぎていきます。質問を質問で返す、いわば「自分で調べて作戦」は、新人看護師にとてつもなく不信感を与えます。現在進行形で起こっている事象に対する解決策は、理屈はわかっていなくてもまずは正解を与えるべきです。そうでないと、仕事が一向に終わりません。

「自分で調べて作戦」は、すでに終わった事象や、これからやることになるであろう事象に対しては有効ですが、現在進行形の事象にそれをやられてしまうと「答えも教えてくれないんじゃあ、どうすればええねん」というジレンマに陥ります。

そして、指導者のきつい言い方に対してのアフターフォローもしておきます。
「報告しようと思ったのに、出来なかっただけなんだよね?指導者さんは勘違いしているみたいだから、私から言っておくね」

この一言があるだけで、新人看護師は安心感を持ちます。自分の行動が勘違いされたという事実を、きちんと受け取ってくれる人がいるんだ、という安心感はつまり、「私はこの職場にいていい」という安心感につながります。これはとても大事なことです。

 

では、指導者にはどう伝えると良いでしょうか。先ほども紹介した、中原先生のフィードバック入門には、フィードバックのプロセスも書かれています。

【事前】…情報収集

【フィードバック】
①信頼感の確保
②事実通知:鏡のように情報を通知する
③問題行動の腹落とし:対話を通して現状と目標のギャップを意識化させる
④振り返り支援:振り返りによる真因探求、未来の計画づくり
⑤期待通知:自己効力感を高めて、コミットさせる

【事後】…フォローアップ

フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術 /中原淳 著」より抜粋

 

では、私だったら指導者に対し、どのようにフィードバックするか、対話式で書いてみます。

(信頼感の確保)
私:Aさんお疲れ様、今日は緊急入院と緊急手術が重なって大変だったみたいだね。指:そうなんですよ!てんやわんやで、全然仕事が終わりませんでした!

私:新人さんのことも見なきゃいけないし、大変な時期だよね。

指:そうなんです、さっきも重要な報告をこんな時間になって報告してきて…。今年の新人も、全然仕事出来なくて呆れちゃいます。

私:そのことなんだけど、新人さん、お昼過ぎに一回報告に来なかった?

指:え…、来たかなぁ…。忙しくて忘れちゃいました。でもそうだとしても、夕方に来るのは遅すぎじゃないですか?

私:でも一回は報告しに来てくれたのに、遅いって怒られたら新人さんも困っちゃうよね?遅くなったのも、きっと忙しそうにしていたAさんを見て、気を使ったんじゃないかな?

指:…そうかもしれないです。でもあの報告は遅すぎますよね。

(事実通達)
私:さっきAさんが新人さんに怒っているのを私は見たんだけど、新人さんが一方的に悪い、みたいな言い方だったよね。新人さんはまだ、報告を何時までに、忙しそうにしててもしなくちゃいけない、今はしなくてもいい、みたいな優先順位はつけられない時期だと思うよ。それも含めてAさんは指導する必要があるし、さっきはそれが出来てなかったと思うんだけど、Aさんはどう思う?

(問題行動の腹落とし)
指:そうかもしれないですけど、私も自分の仕事でいっぱいいっぱいだったんです。

私:いっぱいいっぱいだと、怒っちゃうっていうこと?

指:誰でもそうじゃないですか?

私:いっぱいいっぱいでも、「今は忙しいから、手短に話して」とか「今は忙しいから、30分後にまた声かけて」とか、「報告が遅いと思うんだけど、どうしてできなかったのかな?」とか、言える人はいると思うよ

指:私には無理です

私:じゃあ同じことを、患者さんにも言うの?「なんでもっと早くに言わないんですか!」って怒るの?

指:…怒りません。焦ってても、ちゃんと考えて言葉を選ぶと思います。

私:患者さん相手なら、ちゃんと言葉を選ぶことが出来るっていうことだよね。新人さんにも、同じように言えないのは、どうしてかな

指:…怒ってもいい対象だと、思ってるからかもしれないです

私:それはどうして?

指:みんなも同じように怒って対応しているし、新人は怒られてなんぼだと思ってるからです

私:Aさんは指導者になる時、どんな指導者になりたいと思ったのかな

指:新人に頼ってもらえるような、何でも聞いてもらえるような指導者になりたかったです。私のプリセプターは全然話を聞いてくれない人だったので。そういう人にはなりたくないと思っていました。

私:でも実際はどうかな?

指:私が嫌いだったプリセプターと同じような態度だったかもしれません

(振り返り支援)
私:じゃあ今後は、どういう風に対応できる指導者になりたいと思う?

指:頭ごなしに決めつけて言うんじゃなくて、ちゃんと相手の言い分も聞ける努力をしたいです。

私:いっぱいいっぱいな時は、どうする?

指:自分も忘れちゃうかもしれないから、時間を決めてまた声をかけてもらうようにします

(期待通知)
私:少しずつ変われるように、私も期待しているよ。もしまた同じようなことがあったら、声をかけてもいいかな?

指:私もついカッとなって言っちゃうこともあるので、その時は教えてください

私:わかったよ、ちゃんと話を聞いてくれてありがとう。何か困ったことがあったら、いつでも言ってね

実際は、こんな風にすぐに非を認めてくれるわけではありませんが、フィードバックとはこのように、相手に事実を伝えて、目標とのギャップを明確にし、今後の行動を改善させるための方法です。

頭ごなしに「あなたの言い方はきついから変えなさい」と言っても、変わる人は一人もいません。

何故そういう行動をしてしまうのか、という原因を追究しないことには一向に何も変わることはないのです。その原因は様々です。この例は、周りも同じだから自分もやっている、という理由でした。ぱんだくまこさんの職場はこの原因に当てはまるのではないかと思います。

相手に「だめだよ」と伝えるのはとても難しいことです。私も、何人もの問題児と接してきましたが、真の意味で変えることが出来た人は多分一人もいません。特に性格に難のある人は、これまで培ってきた価値観や、育ってきた環境などに強く影響されており、自分の正しいを捻じ曲げるのがとても難しいからです。

性格を変えることは出来なくても、行動を変えることはできます。
真の意味で納得していなくても、行動に移すことはできるんです。
そしてその行動を繰り返すことによって、意味を理解できることもあります。

納得しなくてもいいから、まずは行動させる。
そこから意味を理解してもらう。

教育は奥深いですが、だからこそ面白いと私は思います。

 

さくらこ先輩
さくらこ

最後に、さくらこ から ぱんだくまこ さんへ

この度は、投書箱よりお悩みを送信していただきありがとうございました。

職場環境を変えるというのは、とても根気がいるし、時間がかかります。

私の職場も、私がプリセプターを担ってから10年以上たちましたが、本当の意味で教育が整ったなと思えたのはここ数年です。

職場全体のボトムアップには、教育に関しての知識の周知が必要不可欠です。世間一般的に正しいとされることが、今の自分たちとどう違うのかを突きつけるのが効果的だと思います。

教育の教育がなされないまま、プリセプターを担う今の看護業界は異常です。そんなの、パワハラが横行して当たり前です。なんなら、飲食店のバイトリーダーの方がちゃんと教育出来ているのではないか?とすら思います。

今回はフィードバックについても触れてみました。ぜひ活用してみてください。

さくらこ


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