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教育担当者「毎年、新人看護師の半数が辞めていく現状を変えたい」

さくらこのお悩み相談室(Q&A)

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このカテゴリーでは、サイトやTwitterアカウントに寄せられた質問にお答えしていきます。

似たような境遇にある方やお悩みを持っている方が、少しでもお悩みを解決出来たらよいなと思い、質問提供者の許可を得て作成しております。

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ケース10 教育担当者「毎年、新人看護師の半数が辞めていく現状を変えたい」

こちらは、サイトのお問い合わせフォームよりいただいた、当サイトを印刷して学習会にて利用したいという許諾申請の際にいただいたメールです。

こんにちは、はじめまして。突然のご連絡申し訳ありません。
私は、都内の急性期病院に務めている看護師のAと申します
以前よりさくらこ様のツイッターをフォローしており、こちらのホームページにたどり着きました。

私は現在看護師6年目で、2年ほど前から病棟で看護教育に携わっておりますが、当病棟はその当時から何も教育に対する指導を受けず、経験年数のみで教育に回される傾向にあります。教育は面倒なものとして扱われており、ベテランは何も手を出さない状態半面、新人看護師の成長の責任を教育者として教育すら受けていないスタッフの責任として責め立てる傾向にあります。教育スタッフもどのように教育をしたらよいのかわからないなか、新人看護師とベテランの板挟みになりながら行った結果、毎年半数の新人看護師が当病棟を去ってしまっているという現状がありました。

どうしてもこの状況を打破したく、昨年度から教育に関する研修等に参加し、教育スタッフへフィードバックして参りました。

そのような中で、来年度から新しく教育に携わるスタッフへの勉強にさくらこ様のホームページが大変興味深く、わかりやすい内容であったため、ぜひ使用させて頂きたいと思った次第です。

最後にもうひとつ、さくらこ様は教育に10年以上携わっていらっしゃるとのことで、部署での教育の上部もされていたのではないかと思い、質問があります。
私は、仕事に置いてPDCAサイクルを回すことは大切だと考えており、それは教育に関しても同様で、「教育を受ける側」と「教育をする側」両方の評価が必要と考えております。
新人看護師などの「教育を受ける側」は、技術習得数などで評価をされることが多いと思うのですが、基本的に成長点しかありませんので、それなりに成長したと評価されていくかと思います。
しかし、病棟の教育体制や指導者側への評価については、どのように評価をしたら良いのかと悩んでおります。
上記の「教育を受ける側」の成長をアウトカムにするのは必要なことかと思うのですが、そうすると次の改善点なく毎年同じような教育の流れになってしまうと思うのです。
「教育を受ける側」の視点からの評価も欲しいと思うのですが、そうすると少しパワハラっぽくなってしまわないかと思ったりすることもあり、悩ましく思っております。
これまでのさくらこ様の経験の中で、「教育をする側」の評価を実施していたとしたら、どのようにされていたのかなどご教授いただければと思っております。

さくらこからの回答

Aさんから、私は看護教育に携わり現状を打破したいというメールをいただき、私と同じ思いでいる仲間がいることにとても感銘を受けました。

実際に、特に後半部分の質問に対して私が返信したメールの内容はこちらです。

当院では、指導者(プリセプター)と教育委員がチェックリストを用いて面談を行い、プリセプターとして成長したかどうかを評価しています。そこには「プリセプティが成長したかどうか」は反映していません(なぜかは後述します)
 
チェックリストの内容は主に「新人看護師の現状をちゃんと把握しているかどうか」「新人看護師の精神的フォローが出来ているかどうか」「新人看護師の教育環境を整えることが出来ているかどうか」「プリセプターの役割を通して自己成長が感じられるか」といった内容で、約25項目くらいに分かれてチェックしています(4月、9月、2月の年3回)。
 
この内容には「実践的指導力が向上したかどうか」についてはチェックしていないので、どちらかというと「プリセプターが新人看護師に興味をもって接し、新人看護師の教育を通して自己成長が促されているかに重きを置いたチェックリストです。要は「ちゃんと自分は教育できているんだろうか??の答え合わせを教育委員と共に行っている感じです。
 
このチェックリストに新人看護師が成長しているかどうかを反映させていないのは、「新人看護師の成長=プリセプターの指導力の結果」では決してないという部分が大いに関係しています。私のサイトの「成長しない新人看護師」関連の記事にもこのことが記載されているのでご一読ください。
 
新人の成長度合いをアウトカムにして、病棟の教育体制や指導者の指導力の評価をする必要があるかどうかに関して。
 
Aさんの病院では、厚労省が出している新人看護師チェックリストを用いていますか?
また、病院や病棟で新人看護師の年間スケジュールは立てているでしょうか?
新人看護師が「この時期までにこの技術を習得する」というスケジュールから、毎年逸脱して支障をきたしている、といった組織的問題が浮き彫りになっている場合は、教育体制を見直す必要があります。毎年同じことが繰り返されているという現状は、指導者個人の指導能力と言うよりも、組織的に何かが足りないということを意味しています。
例えば、オリエンテーション・OJTの質や時期の問題、そもそもの年間スケジュールに無理がある、指導者任せ(組織的に教育に無頓着など)の教育体制になっている、などです。
 
新人看護師の成長度合いをアウトカムに、指導者の指導力の評価をするかどうかについては、私は必要ないと思っています。というか、無理だと思います。
 
新人看護師が指導者を評価する、ということをしようとすると、教育を享受する人に意見を聞くと弱者的バイアスがかかるので、真の意味での評価は出てこないと思います。ようは「このプリセプターの指導は全然だめです」という評価は絶対に出てきません。新人看護師は、今後この組織にいなければならないのに先輩を批判するという行為はできないからです。
 
ただし、この方法なら真の意味での評価が出てくる可能性が大いにあります。それは「無記名」「個人が特定されない状況」で、「若年層(1~3年目など)」を対象に、「この部署で指導を受けた状況でありがたかったこと」「こうして欲しかったと思うこと」「困ったこと、辛かったこと」などのアンケートを取ることです。
 
この手法を使って、プリセプター以上の人に「この部署の教育体制で足りないと思うこと」「こうすればもっと良くなるのにと思うこと」「今の体制でここは良いと思うこと」などというアンケートを取れば、「意外とみんな、教育について考えているんだな」という意見も引き出すチャンスが生まれます。
 
教育体制を整えるために、真っ先に指導者を評価する、を実施してしまうと、「辛い思いをしてプリセプターやってる上に、なんで指導力まで評価されにゃならんのだ(ていうか教育について教えてもらってないし、なんなの?)」という二重苦に晒してしまいます。
 
取り組む順番としては、
①現状と課題を正しくとらえる
②スタッフ全体に教育への興味を持ってもらう
③正しい教育とは何かを浸透させる
④何を改善すべきなのかを一緒に考える
⑤部署全体で教育の改革に取り組む
 
をやって、はじめて
 
⑥教育の「質」を評価する
 
が可能になると思います。
 
個人が個人を評価する、というのは倫理的にも難しく、場合によっては努力している人を傷つけてしまう結果になってしまうこともあり、注意が必要です。
 
Aさんは「毎年、新人看護師の半分が病棟を去るという現状を変えたい」と書いていましたね。また「新人看護師の成長をプリセプターに責任をおしつけ責め立てる状況」でもあると。
 
Aさんも薄々感じていると思いますが、一番問題なのは組織的な教育への関心のなさだと思います。
まずはそこから変えていかないと、指導者とベテランの認識の乖離がどんどん広がっていきます。
 
難しいとは思いますが、病棟全体に働きかける必要性が必ずどこかで発生します。
 
もう3月で新人が来るまでもう時間もないので、今年はプリセプター候補生とAさん率いる教育のバックアップ体制を担う人達で、正しい教育とは何かを考えながら、今年は進めてみましょう。
途中、病棟会などで可能ならば「今年から教育について新しいことを始めます」「新人看護師の離職を防ぐために、新人と指導者のバックアップ体制を整えます」「そのためには、部署全体の協力が必要です」ということを、ちょっとずつ伝えていけたらベストです。
 
なお、部署全体の教育の強化を押し進めるためには、必ず上司の許可と方向性の統一が必要です。(新人看護師がそんなにやめる部署なら、上司も毎年看護部長に怒られているはずです^^;)

少しでもそこがずれると、「なんか教育チームが勝手に変なことを言い出している」と反発にあいます。
全体的な質の強化は、ボトムアップだけでは限界があります。協力者を少しずつ増やしていきましょう。
ベテランのうちの一人でも協力者になれば、かなり強力な助っ人になります。
長期的に、結果を焦らず、取り組んでいく必要があります。
前途多難そうですが、是非頑張ってほしいです。
1人で背負い込まず、仲間を増やしていきましょう。
Aさんがつぶれてしまったら、元も子もありません。
 
長くなりましたが、もしもっと具体的に知りたいことがありましたら、折り返しご返信ください。
 

さくらこ

※このメールは3月下旬に作成したものです

このメールに対し、Aさんよりお返事をいただきました。
組織的な教育への関心のなさ」という問題が一番大きいというのはその通りで、2019年度は看護長にも協力してもらい、病棟全体として教育への関心を高める活動をしておりました。
ようやく、2019年度の新人教育でその基礎が出来上がってきましたので、次の課題に取り組もうと思っていたところでした。
もうそろそろ私は現在所属している病棟から異動になると予想されますので、とにかく基礎を作ってからいなくなりたいと思い、少し焦っていた次第です・・・焦りは禁物ですね。
さくらこ様からのアドバイスを参考しに、今年度は教育についての勉強会を病棟で行おうと思っています。
また、当院では教育に携わるスタッフに「教育担当者」や「実地指導者」など名称がついているので、院内の看護部レベルで教育のスタッフに何を望んでいるのか、病棟レベルで教育のスタッフに何を望んでいるのかを明らかにし、各役割についたスタッフが役割を認識して教育に取り組めるようにしようと考えております。
そして、異動時には仕事を引継ぐことができるよう活動する予定です。
もうすぐ新1年目がやってきますが、コツコツ頑張っていこうと思います。

また再度何か疑問や悩みが発生した際にはさくらこ様に相談させていただくかもしれません。まずは、コツコツさくらこ様のホームページ内容を伝えるところから始めていきたいと思っております。

この度はご丁寧にアドバイスいただき、大変感謝しております。
コロナ騒ぎで大変な時期ですが、お身体ご自愛くださいませ。

 

このお悩み相談のやり取りからわかる通り、組織的な教育への関心のなさが新人看護師の離職やプリセプターと言う役割をやりたくないスタッフを作り出しています。

また、それを打破しようと考えた時に行うステップも、そう簡単にはいきません。

文中にもありましたが、私が思う(そして実際に行った)教育を組織に根付かせるためのステップは以下の通りです。

①現状と課題を正しくとらえる
②スタッフ全体に教育への興味を持ってもらう
③正しい教育とは何かを浸透させる
④何を改善すべきなのかを一緒に考える
⑤部署全体で教育の改革に取り組む
⑥教育の「質」を評価する

このステップが必須だと、私は考えています。ただし、これはボトムアップしていく過程での方法なので、管理者がトップダウンで行う場合は、いくつかのステップを省略することが出来るかもしれません。

基本的に、「なぜ離職が続くのか」「何が原因なのか」「何が組織的に足りないのか」というなぜなぜの過程をスキップしてしまうと、独りよがりな対策になってしまい、結果的に努力に見合った効果が生まれません。

その「なぜ?」は、職場職場で違います。

指導者も、指導される側も、指導者を指導する人も、皆が満足して教育体制を整えるまで、私は数年を要しました。そしてそれは、私が部署である程度信頼される地位が確立できたからこそ出来たのであって、全ての人が同じようにできるとは限りません。

仲間を増やしましょう。
上層部を味方につけましょう。
「これでいいや」ではなく「なんとかしなくては」という意識づけを目指しましょう。

組織を変えるというのは、短時間でぱっとできることではありません。
「これじゃだめなんだ」「これって私のことかも」と理解できる時間も必要です。

全国の、何とかしたいを形にしたい皆さん、是非参考にしてください。


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