「さくらこのお悩み相談室」へようこそ。
このカテゴリーでは、サイトやTwitterアカウントに寄せられた質問にお答えしていきます。
似たような境遇にある方やお悩みを持っている方が、少しでもお悩みを解決出来たらよいなと思い、質問提供者の許可を得て作成しております。
もし同じようにお悩みを抱えている方がいらっしゃれば、投書箱かお問い合わせより質問をお送りください。
ケース1 中途採用看護師
「病院独自のルールを教えてもらえず、仕事をさせてもらえません」
こちらは、TwitterのDMでいただいた質問です。
はじめまして、Aと申します。
前院で私ともう一人中途で入ったのですが、ろくに教育がなされないまま受け持ちが付き、業務をさせられるようになりました。
自分ともう一人は、3年以上の経験年数がありますが、その病院独自のルールはわからなく聞く人それぞれ違うことを言う現状でした。
自分は日々気になったこと、疑問に思ったこと、少しでも不安感じたことはその都度聞いていました。しかし「報告が遅い」だの、「経験はあるだろうけどこの病院で初なものは勝手にやらないで」と言われてしまうようになりました。
頻回な報告は入職時に師長から言われてたことで、病棟のルールにのっとり、その都度、報告・連絡・相談をリアルタイムに行っていましたが相手は聞いていませんでした。
だんだんと受け持ちがなくなり、夜勤もなくなり手取りが15万の状況下と職場環境にはそぐわず約半年で退職しました。
明日からまた新しい病院で勤務先いたしたしますが前院の二の舞になるのではないかと不安です。 自分に落ち度あるのであれば改善したいですし、今度は長く勤めたいです。
(Aさん/20代後半/5年目/中途採用看護師)
さくらこからの回答

あなたに落ち度はありません。駄目なのは職場の教育です。
この質問に対し、私は以下のように回答しました。
Aさん初めまして。DMありがとうございます。
前院の対応を見ましたところ、Aさんに落ち度はないと思います。
既卒看護師への教育制度はどこの病院でも未熟な部分が多く、課題は山積みだと思います。 慣習など、調べてもわからないことを教えない職場は、往々にしてこのような状況に毎度陥っているのだと思います。
新しい病院がどのようなところかわかりませんが、良い教育が受けられると良いですね。 自分に落ち度があったから、転職を繰り返せざるをえないという考えは、なくしていいと思います。それだけ、「いやいや、それ、おかしいでしょ」という病院が多すぎます
もし新しい職場で「やっぱり自分の何かが悪いのかもしれない」けど「誰も指摘してくれない」という状況に陥ったら、またDMをください。一緒に対応策を考えましょう。
さくらこ
この質問からわかることは、「中途採用者や異動者に対する教育体制の不十分さ」が病院よっては顕著に表れているということです。
中途採用者にプリセプターのような相談相手を作る病院と、作らない病院があると思います。昨今取り入れられ始めたPNSでは必ずパートナー=相手が作られるので、聞きながら覚えるということが出来るかもしれませんが、それでも人によっては言うことがまちまちだったりします。
この相談者さんもこの病院の根拠性のなさに気づいており、以下のようにも言っていました。
教育体制が不十分な病院は、(私が見聞きした上で体感した部分ですが)根拠のない慣習や、エビデンスのない処置などがまかり通っている印象です。
逆に教育がしっかりしている病院は、
①新卒者・既卒者・異動者に対してどのような視点で関わったらいいかが、あらかじめ決まっている(もしくは上司がしっかり把握している)
②処置や行為に対するエビデンス充分なマニュアルがそろっている
③一つの処置に対し、誰もが一貫した説明、実施が出来るシステムが整っている
④新規加入スタッフが出来ない理由を、本人の性格のせいにしない
などがあげられると思います。
今は新人看護職員研修ガイドラインが制定されたことにより、1年かけて新人をどこまで教育するのか、と言う基準が確立されました。これにより、新人看護師に対する教育の基盤は整ってきたように感じます(が、病院によってはいまだに新人いびりが横行しているようです)
しかし、卒後2年目以降のスタッフの熟練度をどのように上げていくのか、とか、中途採用者や異動者などの「ある程度、経験で出来る部分もあるが、職場の慣習に慣れていない人」に対して、どのように教育していくのか、という基盤ははっきり言ってどこも築かれていないように感じます。
私が働いている手術室は特殊な領域なため、中途採用者、異動者、他病院の手術室経験者でも、必ずプリセプターをつけています。つまり、「知らないことが当たり前」というスタンスでありつつも、その人が今まで培ってきた看護師としての経験は活かす関わりをしています。
そういった意味では手術室など特殊領域のスタッフは、どんな経験がある人でも分け隔てなく教えるという行為を自然に獲得することが出来てきました。実際に、Twitter上でもいろんな方から「手術室のオリエンテーションが一番親身でわかりやすかった」とか、学校教諭の方からも「手術室の見学はいつも丁寧に教えていただいて助かっています」といった意見が聞かれます。
しかし病棟では、病棟経験者相手だと「これくらい知ってるよね」とか「むしろ教える方が失礼に当たるかも?」など、相手の経験や尊厳を損なわずに教えるということが不慣れな印象です(私は病棟で働いたことがないので、あくまでも聞いた話を統括した印象です)
この質問者さんの悩みの中にもあるように、
・その病院独自のルールはわからなく、聞く人それぞれ違うことを言う現状
・「経験はあるだろうけどこの病院で初なものは勝手にやらないで」と言われた
といった、「誰も正解を教えてくれないのに、勝手にやるな」という矛盾した対応を取られていました。
「じゃあどうすればいいんだよ?」って思いますよね。私もそう思います。
新卒ではない新規スタッフに対してどのように教えたらよいのか、どこまでを独り立ちとするのか、という部分に不慣れな病棟は、スタッフの出入りが激しいです。
看護師が入っては辞め、入っては辞めを繰り返し、新規スタッフをお荷物のように扱う病棟は日本中いたるところにあるようです。
これが潜在看護師が復職できない理由の一つでもあると感じています。
もしこの記事を読んでいる方の中に、中途採用者や異動者の定着率(数か月で退職)が悪くて困っている病院経営者や管理職の方がいらっしゃったら、それは間違いなく教育体制が不十分だからです。教育体制が充実していてそれでもやめてしまう人(1~2年で退職)が多いなら、それは給与か勤務の煩雑さが原因ではないかと思います。
自分が今まで培ってきたものを発揮することなく、出来ない人扱いされる。
職業人としてこんなに辛いものはありません。
このような人を少しでも減らすため、新人教育だけでなく、中途採用者・異動者の看護師教育についてもっと具体的に取り組む病院が増えていってほしいと思っています。
ちなみに、Aさんは無事に新しい病院でしっかりと教育を受けられており、私もほっとしています。
新しいところに務めだして約1週間になりますが、皆さんとてもよく教えてくれます。 また未経験部門で尚かつ非常勤の自分ですが分け隔てなく、一般業務から専門知識教えてくれるのでとてもやっていて楽しいと思える場所です。
もっと他のプライマリーサーベイも観察できたのではないかと上司へ相談も気軽で、どうしてそのアセスメントになったかまで気にかけてくれます。
今まで働いてきたなかで、ちゃんと話を聞いてくれる職場はここが初めてです。
そしてAさんも自分の行動を振り返り、このようにもおっしゃっていました。
新しい職場で心機一転、自分の行動も振り返りつつ職務にあたっているAさんを、今後も応援していきたいと思っています。
このサイトでは、指導者が辛くならないための看護師の育成についてまとめています。
また、この記事のように教育や育成に関する質問を、無記名・メアド不要で受け付ける「さくらこのお悩み相談室」を開設しました。医療現場での指導場面での悩み、指導される側の「これって変じゃない?」「もう辛くてやめたい」というお悩みにも対応します。お気軽にご利用ください!
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